2022年に住宅ローン控除の大きな改正がありました。控除の存在を知っていても、住宅購入を検討するまでは中身をよく知らない方も多いでしょう。これから新しくマイホームを買い、控除を受けようとしている方はどのように変わったのか知っておきたいですよね。そこで今回は、住宅ローン控除についてくわしく解説します。
そもそも住宅ローン控除制度とは?
マイホームの購入は、人生で一番大きな買い物といわれているように、かなり大きな金額が必要です。手持ちのお金で払うという人はなかなかおらず、たいていの人は住宅ローンを利用しているでしょう。
住宅ローンとは、金融機関からお金を借りて、利息も含め毎月少しずつ払っていくことです。こうした住宅ローンの返済による経済的負担を和らげ、住宅を購入する人を増やし、経済の活性化につなげることを目的として作られた制度が“住宅借入金等特別控除”です。
一般的には住宅ローン控除や住宅ローン減税といわれることが多いです。住宅ローン控除では、年末の住宅ローン残高に応じて決められた控除額が所得税や住民税から減税されます。住宅ローン控除は新築だけでなく中古住宅を購入する際にも適用されますが、それぞれ満たす必要がある条件が違うため注意が必要です。
2022年以降の住宅ローン控除の変更点
住宅ローン控除は、2022年の税制改正で大きな変更がありました。ここでは主な変更点についてお伝えします。
■控除率の引き下げ
今回の改正で大きく変更された点は、控除率が1%から0.7%に引き下げられたことです。これまでの1%の減税と比較すると、減税額は大きく下がります。
そもそもの理由として控除率が引き下げられたのは、数年前から指摘されていた制度の歪みの問題があったからです。もともとローンの金利負担を軽減することを目的としてつくられた制度であるにもかかわらず、直近10年ほどの住宅ローン金利は控除率1%を下回っており、住宅ローン控除を利用することでローンの利息分よりも控除される額のほうが多くなってむしろ得をしてしまうという逆ザヤ状態に陥っていました。
必要もないのに住宅ローンを組んだり、あえて繰り上げ返済をしなかったりするという動機づけにつながっているとして、ここ数年改善が求められてきました。そのため、今回の改定で控除率の引き下げにいたったという経緯があります。
■控除期間の延長
住宅ローンの年末残高の0.7%が控除される期間は、2022年から2023年までは最長で13年間になります。新築住宅を対象とした控除期間について、従来は原則10年間だったところが13年間に延長されました。
ただし、2021年11月末までは消費税増税および新型コロナウイルスの影響により控除期間は13年となっていたため、とくに変わりはないともいえます。なお、中古住宅については今までのままで、10年間です。
■ローン限度額は省エネ性能によって変わるように
新築住宅を購入するときの控除の対象になるローン限度額は、今までは4,000万円~5,000万円でしたが、2022年以降は住宅の省エネ性能に応じて細かく分かれることになりました。
認定住宅、ZEH(ゼッチ)水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅、それ以外の住宅の4段階に分類され、それぞれ限度額が決まっています。2022年~2023年の入居か2024年~2025年の入居かによっても限度額が変わるため、注意が必要です。
省エネ性能をよくするほどローン限度額が高くなり、減税額も上がります。そのため建売住宅を購入する際は、認定住宅であるかどうかをしっかり確認しましょう。ただし、省エネ性能が高いと販売価格も高いことが多いため、減税のことだけを考えるのではなく、価格やローンの返済計画についても総合して検討することが大切です。
中古住宅の場合は、細かい区分は設けられておらず、認定住宅などとそのほかの住宅の2段階のみです。
■所得要件は2,000万円以下に
住宅ローン控除には、所得の上限額も決まっています。この度の改正により、上限額は年間所得3,000万円以下だったものから2,000万円以下に引き下げられました。年間所得が2,000万円を超える年は、住宅ローン控除を受けられないので注意が必要です。
住宅ローン控除の申請方法
ここからは、住宅ローン控除の申請方法をお伝えします。住宅ローン控除を受けるためには、入居した年の翌年に確定申告をしなければなりません。会社員など給与所得者は普段は自分で確定申告をしない人が多いとは思いますが、確定申告を行わないと控除を受けられないので、忘れずに必ず申告しましょう。
個人事業主の方は、一般の確定申告とあわせて行ってください。確定申告をした年の10月ごろに、税務署から特別控除申告書が送られてきます。会社員の方は、勤務先に特別控除申告書を提出すると、2年目以降は年末調整で控除を受けられます。個人事業主は、確定申告の際に税務署に提出しましょう。
ここまでお伝えしたように、住宅ローン控除の改正による影響は、所得や住宅購入の時期、省エネ性能、新築か中古かによっても変わってきます。建売住宅を購入する際はとくに、間取りや設備、仕様、販売価格に目が行きがちですが、省エネ性能による控除の金額や年数の違いも踏まえたうえで比較検討をすることをおすすめします。住宅ローン控除の内容は定期的に改正されているため、住宅購入を検討している方は最新情報を確認したうえで判断をしたり、計画を立てたりしましょう。